労働保険の年度更新手続きの際に出てくる「一般拠出金」。
今まで詳しく気にしたことが無かったけれど、どういったものなのでしょうか。
一般拠出金が制定された経緯や拠出金の使い道について今回調べてみました。
アスベスト(石綿)とは?
「アスベスト」とは、天然の鉱石の名前で、日本では「石綿」と呼ばれます。
石綿は、極めて細い繊維でできており、熱や摩擦に強く、耐久性に優れています。
その一方で、安価で採掘できることから「奇跡の鉱物」として様々な製品に広く使われてきました。
特に、建物の断熱材や防火材として、建築物の多くに取り入れられていました。
人体への影響・健康被害
しかし、1960年代頃からアスベストは人体に多大な悪影響を及ぼすことが分かってきました。
空気中の大量のアスベストを吸うと、肺がんや中皮腫の原因になる研究結果が続々発表されたのです。
その結果、日本でも1975年にアスベストの使用が禁止され、年々厳重な管理が義務付けされました。
しかし、建築物をはじめとした多くの製品に既にアスベストが広く使用されています。
アスベストが使用された建物を取り壊す際、大量のアスベストが飛散し、作業員だけでなく近隣住民にも肺がんや中皮腫などの健康被害を及ぼしてしまっていたのです。
アスベストを調査している環境再生保全機構の発表では、2005年にアスベストを原因とした中皮腫で死亡した方は911名だそうです。
健康被害は重大な社会問題となりました。
そんな被害に合われた方々を救済しようと、2006年に「石綿による健康被害の救済に関する法律」という法律が制定されます。
健康被害の救済
この法律では石綿により被害を受けた方々への救済として、医療費を国から給付することを定めました。
【支給対象者】
日本国内で石綿を吸入し病気にかかった者、もしくはその遺族。
【支給内容】
●医療費:医療費全額を負担
●療養手当:月103,870円
●葬祭料:199,000円
●特別遺族弔慰金:2,800,000円 など
この救済措置は現在でも続けられており、延べ1万件以上の支給を行ってきました。(参考)
これらの給付金の財源として、一般拠出金が設けられたのです。
一般拠出金とは
アスベスト被害者への給付金の財源として、全ての事業所に拠出が義務付けられました。
●いつから:2007年(平成19年)から
●納付方法:労働保険料と一緒に年に一度納付
●料率 :1000分の0.02(2014年4月以降)※2014年3月までは1000分の0.05
●負担者 :事業主。社員負担はなし。
業種問わず全ての事業所に適用され、拠出率も全業種一律で定められています。
ちなみに、拠出するのは事業主だけでなく、国や地方自治体も同じく拠出をしています。
こちらの拠出金は「特別拠出金」と呼ばれています。
今後も注意し続ける必要がある
環境省の予測によると、建築物の解体によるアスベストの排出量は2020年以降にピークを迎えるとのことです。
アスベストが騒がれていたのが十年以上前なので昔の事件のように思っていましたが、むしろこれからピークを迎えるというのは驚きました。
拠出率が非常に低いことから、今まであまり気にしていませんでした。
今後は「一般拠出金」を見る時ぐらいは、アスベストの問題に目を向けていきたいものです。