【2018年5月】経団連の社会保障に関する政策提言を読む。『持続可能な全世代型社会保障制度の確立に向けて』

社会保険

2018年5月、経団連が社会保障に関する提言を公表しました。
題名は、『持続可能な全世代型社会保障制度の確立に向けて』。

今後の社会保障の在り方について考えさせられる点が多く、とても興味深い内容でした。
そこで、今回は経団連が発表した『持続可能な全世代型社会保障制度の確立に向けて』をまとめていきます。

「持続可能な全世代型社会保障制度の確立に向けて」とは

経団連はご存じのとおり、経済界を代表して様々な政策提言を政府に対して行っています。
今回は、今後の社会保障の在り方について提言を行いました。
今回の提言には、「社会保障制度を今のまま続けたら日本は本当に破綻しちゃうよ!?今すぐ変えないとやばいんじゃね?」という危機感が強く滲み出ていました。

背景

では、なぜこの時期(2018年5月)に意見を公表したのでしょうか。
理由は2つが考えられます。

①新たな財政健全化計画策定に向けて

これは2018年の夏に政府が新たな財政健全化計画を策定する予定があるからです。
新たな財政健全化計画に経団連の意見を反映させようと、この時期に公表をしました。

②「団塊の世代」がもうすぐ75歳以上に突入する前に制度変更を

2022年以降、「団塊の世代」がついに75歳になります。
75歳以上の医療費負担は原則1割。(現役並み所得者は3割負担) ※2018年5月現在
現在の制度のまま団塊の世代が75歳に突入したら、経済成長を損なうのでは?という危機感がありました。
団塊の世代が75歳に突入する前に、制度変更を促したいのだと思います。

要約(ざっくり)

今回の提言をざっくりと要約すると、

  • もう高齢者にいい顔をするのはやめにしよう。
  • 社会保障費用の増加をそのまま企業に押し付けるのはいい加減やめてくれ。
  • 目標値(目安)を定めて、本当に大事な領域にちゃんとお金を使おうよ!

といったところでしょうか。
社会保障の負担増加に苦しむ経団連は、これ以上の企業への負担増に歯止めを掛けたいと強く政府に訴えかけている印象です。

具体的な提言内容

では、次に具体的な提言を見ていきたいと思います。

●医療

  • 後期高齢者(75歳以上)の自己負担を原則1割から原則2割とすべき(現役並み所得者は3割を維持)
  • 総報酬制の導入により、健康保険組合等の負担が重くなっている。国費の削減を目的とした安易な財源調整をこれ以上行うことには断固反対。
  • 高齢者の医療費負担は、所得水準のみならず金融資産を勘案して区分を分けるべき

●介護

  • 利用者負担は低所得者層に配慮しつつ、1割から原則2割に改めるべき

●公的年金

  • 基礎年金部分について、高所得の年金受給者に対する支給制限措置を新たに設けるべき
  • 短時間労働者に対する被用者保険の更なる適用拡大に向けて、企業規模要件(500人以下)の撤廃
  • 被用者保険の適用が任意となっている一部業種や個人事業所への適用を義務化すべき
  • マクロ経済スライドにおける名目年金額の下限を外し、給付額を早く調整する仕組みへ見直すべき

●私的年金

  • 私的年金制度の普及・充実を図るため、企業年金等の積立金に対する特別法人税の撤廃、DCの拠出限度額の引き上げ等、税制を見直すべき

●消費税

  • 消費税率10%への引き上げを着実に実行すべき。税率10%超への増税も有力な選択肢。

今回の提言では、以上の大まかなテーマを一つ一つ提案している程度で、具体的な数値やルールまでは言及していません。

企業の給与担当者からの目線

このブログでは企業の給与担当者向けに書いているため、企業の給与担当者目線で思うことを書きたいと思います。
給与担当者の実務に大きく影響を及ぼす可能性がある提言は、以下の4つでしょうか。

  • 高齢者の医療費負担は、所得水準のみならず金融資産を勘案して区分を分けるべき
  • 短時間労働者の被用者保険適用拡大において、企業規模要件(500人以下)の撤廃
  • DCの拠出限度額の引き上げ
  • 消費税増税⇒通勤定期などの改定

この中で特に気になったのは、1つ目の金融資産も考慮して医療費負担を決めるべきという点です。
現状の稼ぎだけでなく、今ある金融資産も含めて、医療費負担割合(1割~3割)を決めることを提案しています。
金融資産ということは、普通預金や有価証券のことですよね。
しかも、後期高齢者だけでなく、会社の健保に加入している高齢受給対象者(70歳から74歳)までも含めて提案をしています。

制度としては賛成です。ただ、お願いだから実務負担をこれ以上増やさないで欲しいとも思います。
70歳から74歳は会社が加入している健保組合に加入しています。
健保組合に該当する社員の金融資産残高を届出することにはなりませんよね?
マイナンバーを使って健保組合が調べるんですよね?

企業の社会保険業務の軽減についても議論をして欲しい

企業や個人に対する社会保険料負担が年々増大していることは大きな問題なので、広く時間をかけて議論されるべきだと思います。

ただ、企業の社会保険業務の増大も大きな問題だと思っています。
マイナンバーの導入によって、いかに社会保険担当者の労働時間が増えたことか。
企業の社会保険業務の軽減についても、もっと広く議論してほしいなと、実務担当者としては思う次第です。