『骨太方針2018』を企業の社会保険担当者目線で読む【実務対応】

政府は、2018年6月5日に「経済財政運営と改革の基本方針2018(仮称)」を公表しました。
これは「骨太の方針2018」と呼ばれるもので、政府が経済財政諮問会議にて公表する年に一度の経済財政に関する基本方針です。
今年は、少子高齢化への対策が最優先として、働き方改革や社会保障制度に関する構想が多く見受けられました。
基本方針ということで、具体的な案までは出ておりませんが、人事給与の実務に大きく関わってくるものが多数ありました。
そこで今回は、「骨太の方針2018」の中から「働き方改革」と「社会保障」に関する項目についてまとめていきます。

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「骨太の方針2018」の内容<働き方改革 編>(抜粋)

「骨太の方針2018」の中で、「働き方改革」に関する事項は以下の通りです。

人づくり革命の実現と拡大

●人材への投資
・幼児教育、高等教育の無償化
・リカレント教育の支援拡充
・企業による中途採用の拡大促進

●多様な人材の活躍(高齢者雇用の促進)
・65歳以上への継続雇用年齢の引き上げに向けた環境整備の推進
・高齢者について成果を重視する評価&報酬制度の構築に取り組む企業への助成
・高齢者のトライアル雇用推進

働き方改革の推進

・長時間労働の是正(時間外労働上限規制、勤務間インターバル制度導入)
・同一労働同一賃金の実現(正規・非正規間の不合理な待遇差の是正)
・高度プロフェッショナル制度の創設(脱時間給制度)
・最低賃金の引上げ(年率3%程度を目途に全国加重平均1,000円を目指す)

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働き方改革に関する提案が実現した場合、実務はどう変わる?

世間をにぎわしている、働き方改革の具体案が多く盛り込まれている形です。
これらの案が実行された際、企業はどんな対応が実務ベースで必要になってくるでしょうか?

勤怠システムの改修・勤怠管理方法の変更

①インターバル制度対応のシステム改修 & 管理方法確立
②労働時間上限の把握機能搭載 & 管理方法確立

これらの機能が設けられた勤怠システムに改修する必要があります。
36協定管理のために、残業時間数の管理は既に実装されている会社も多いと思いますが、多くの会社で勤怠システムの改修が必要になってくるはずです。
改修をすればその使い方について社員への説明会を実施しなければなりません。
人事の仕事は無くならないですね。。

最低賃金の引き上げ⇒パートタイマーの契約変更

最低賃金の引き上げにより、パートタイマーの契約内容をチェックする必要が出てきます。
扶養範囲内で働きたいパートタイマーも少なくないはずですので、全員一律であげる訳にはいかないのが難しいところです。。
最低賃金の引き上げは扶養制度と一緒に議論しなければならないことを常々感じます。

同一労働同一賃金実現⇒諸手当の見直し。

今話題の同一労働同一賃金についてです。こちらの内容に関しては、別記事にまとめています。


「骨太の方針2018」の内容<社会保障 編>(抜粋)

「骨太の方針2018」の中で、「社会保障」に関する事項は以下の通りです。

●社会保障を軸とする「財政強化期間(仮称)」の設定

・2019~2021年度を「財政基盤強化期間(仮称)」と位置付け、社会保障制度改革を行う

●健康づくりの推進

・多様な就労を促進し、社会全体の活力を維持していく基盤として健康寿命の延伸、平均寿命との差の縮小を目指す

●生涯現役社会

・働き方の多様化を踏まえ、勤労者が広く被用者年金でカバーされる勤労者皆保険制度の実現を目指す
・年金受給開始年齢の柔軟化や在職老齢年金の見直し等により、高齢者の勤労に中立的な公的年金制度を整備

●負担能力に応じた公平な負担、自助と共助の役割分担再構築

・高齢者の医療費負担を所得のみならず資産の保有状況を適切に評価しつつ、「能力」に応じた負担を求めることを検討
・後期高齢者の窓口負担の在り方について検討
・年金受給者の就労が増加する中、医療・介護における「現役並み所得」の判断基準を現役との均衡の観点から見直しを検討

社会保障に関する提案が実現した場合、実務はどう変わる?

今回の案は、「高齢者は今まで以上にたくさん働いて、たくさん医療費負担してね♡」という政策が盛りだくさんです。
これらの案が実行された際、企業はどんな対応が実務ベースで必要になってくるでしょうか?

年金制度の見直し⇒退職金制度の再設計?

年金受給開始年齢を「柔軟」にするとして、年金支給年齢の引き上げをにおわせています。
年金支給年齢が今後引き上げられるのならば、退職金制度も変更を余儀なくされるかと思います。
もともと企業の退職金制度は、60歳から年金をもらえるという前提で制度設計している会社がほとんどかと思います。
同一労働同一賃金の兼ね合いもあるため、公的年金の支給年齢見直しに併せて、企業の退職金制度も設計し直す必要がでてきそうです。

高齢者の医療費負担を資産に応じて評価⇒手続きの方法は?

高齢者の医療費は、収入ではなく資産に応じて医療費負担を決めよう。というのが今回の提案です。
この提案は2018年5月に発表された経団連の提案がそのまま反映されている形です。

(経団連の社会保障に関する提言については、こちらの記事を参考ください↓)

参考記事

高齢者の方は医療費負担割合決定のために、毎年総資産を広域連合に届け出るのでしょうか。
しかも、経団連の提案では70歳から74歳の年齢の方もこの制度(資産内容により負担割合を決める)の対象としています。
勤務先が加入している健康保険組合に資産状況を提出することになるのでしょうか?
総資産を把握する手続きの流れがどうなるのか? とても気になっています。


今回の内容はあくまで基本方針なので、これから細かくルールが決められていくのでしょう。
いずれにしても、企業の給与・社保実務に大きな影響が出てくること間違いなしの政策提言でした。
具体的な動きが出てきたら、また記事にしていきたいと思います。