働き方改革法に対する利益団体コメント一覧【反応まとめ】

2018年7月7日働き方

2018年6月29日、目玉法案であった「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(通称、働き方改革法)が参議院本会議で可決され、成立されました。
今回成立したルールは2019年4月以降、順次施行されていきます。

今回の成立を受けて、各利益団体は様々な反応を見せました。
見ていくと、それぞれの特色や姿勢がはっきりと違っていて面白かったので、まとめてみました。

働き方改革法案の内容まとめ

まず法律の概要についてまとめます。

時間外労働の上限規制

  • 月45時間、年360時間を原則。
  • 臨時的な特別な事情がある場合でも、年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)。複数月だと平均80時間(休日労働含む)を限度とする。

高度プロフェッショナル制度の創設(脱時間給制度)

  • 高収入の一部専門職に対して、労働時間・休憩・休日及び深夜の割増賃金に関する規定は適用しない
  • ただし、制度適用後でも、本人の意思で制度離脱が可能

非正規労働者の待遇改善に向けた同一労働同一賃金の導入

  • 正規・非正規労働者の間で、「不合理」と認められる相違を設けてはならない

参議院議員の投票内容(賛成/反対)

次に、政党の姿勢を見ていきたいと思います。
参議院議員の投票内容はこちらのサイトからみることができます。

賛成・反対を党ごとに分けてみると、

賛成:自由民主党 公明党 日本維新の会 希望の党 沖縄の風 等
反対:国民民主党 立憲民主党 日本共産党 希望の会 等

となります。

それでは、本題である各利益団体のコメントを見ていきたいと思います。

日本経済団体連合会(経団連)のコメント

まずは、日本経済団体連合会(経団連)の会長のコメントから。

カテゴリー:「会長コメント」
題名:「働き方改革関連法案の成立を受けた中西会長コメント
発言者:日本経済団体連合会 会長・中西宏明(日立製作所会長)

創造性を発揮できる環境の整備、長時間労働の是正は喫緊の課題である。このたび、安倍総理のリーダーシップの下、働き方改革関連法案が成立したことを、評価する。

残念ながら今回の法案から外れた裁量労働制の対象拡大については、法案の早期の再提出を期待する。

経済界としても、働きがいと生産性の向上、イノベーションを生み出す、働き方改革の実現に向け、取り組みを加速していく。

経団連は今回の法案を大いに評価していることが分かります。
また、わざわざ「安倍総理のリーダーシップの下」と書いているあたり、安倍総理を支持していることが伝わってきますね。

更に、今回の法案では見送られた裁量労働制の対象拡大ついても、早期の成立を期待しています。
(※裁量労働制の対象拡大は、根拠となるデータが不適切だったとして今回の法案には盛り込まれなかった。)

経済同友会のコメント

カテゴリー:代表幹事の発言 2018年度
題名:「働き方改革関連法案の成立について
発言者:経済同友会 代表幹事・小林喜光(三菱ケミカルホールディングス取締役社長)

(抜粋)
長時間労働の是正に向けた罰則規定を伴う時間外労働の上限規制や、高度専門職を労働時間規制から除外する高度プロフェッショナル制度の創設などが実現することとなり、働き手の健康への配慮とともに、日本の生産性向上に向けた改革の第一歩が踏み出されたことを歓迎する。

第4次産業革命の進展が進む中、世界で克ち抜くための競争力強化には、創造性を高める新しい働き方が不可欠である。時間や空間に縛られない、より多様で柔軟な働き方の実現に向け、政府には労働法制の抜本的見直しなど、より一層の改革推進を求めたい。
働き方改革の実現へ向け、民間企業が率先して実行することに加え、国家公務員等の長時間労働是正や創造的な働き方など、生産性向上に向け、日本全体で一丸となって取り組みを強化する必要がある。

経団連同様に、今回の法律を評価しつつ、更なる改革を求めています
労働時間の上限規制など、経営者側からしたら負担となる内容もありますが、政府が経済界に譲歩した場面をもあったので、良しとしているのでしょうか。(労働時間上限は最大単月80時間を労働者側は求めていたが、最終的に経済界が主張する100時間となった)

経済界にとってはあまりメリットの感じにくい今回の法律ですが、時代の流れとして今回の働き方改革を支持している印象です。ただ、それらを受け入れるかわりに、脱時間給制度の更なる拡充を強く求めていることが文面からひしひしと伝わってきます。


それでは、次に労働組合側のコメントを見ていきましょう。

日本労働組合総連合会(連合)のコメント

カテゴリー:「事務局長談話」
題名:「働き方改革関連法案の可決・成立に対する談話
発言者:日本労働組合総連合会 事務局長・相原康伸

1.時間外労働の上限規制等は評価も、高度プロフェッショナル制度の創設は遺憾
(略)…罰則付の時間外労働の上限規制や中小企業における60時間超の時間外労働の割増賃金率に対する猶予措置の撤廃、雇用形態間における不合理な格差の解消に向けた同一労働同一賃金の法整備など、連合が求めてきた事項が実現する点は評価できる。しかし、「高度プロフェッショナル制度」という、労働基準法上の労働時間規制を適用せず長時間労働を助長しかねない制度が法案から削除されることなく創設されたことは、極めて遺憾である。

2.答弁の引き出しや附帯決議等は、野党の強い意思の表れ
立憲民主党および国民民主党は、高度プロフェッショナル制度の削除を始めとした、「働く環境をより良くしたい」との理念に沿ったそれぞれの対案を5月8日に衆議院に提出するとともに、衆参の厚生労働委員会質疑において、法案では明確にされていない問題点に切り込み、今後の労働政策審議会における議論の糧となる多くの答弁を引き出した。(中略)
これら一連の取り組みは、何としても働く者のための働き方改革を実現しなければならないという、野党の強い意思の表れであり、その渾身の努力に敬意を表したい。

3.労働政策審議会をはじめとした場で、さらなる取り組みが必要
働き方改革関連法の議論の舞台は、労働政策審議会に移る。条文では明確になっていない、「高度プロフェッショナル制度」の対象業務や年収要件、時間外労働の上限規制の詳細、勤務間インターバル、同一労働同一賃金に関するガイドラインなど、省令・指針等において定めなければならない事項は多数に上る。(中略)
過労死等ゼロはもとよりすべての働く者の健康と安全を確保する視点からの引き続きの取り組みが必要である。

4.働く者の働き方改革の実現のためには、労使の取り組みが必要不可欠
法律は各職場で活かされて初めて、働く者の働き方改革が実現する。法の実効性確保のためには、労使がともに法を理解し、運用するための集団的労使関係が必要不可欠である。連合は、労働政策審議会における政省令等の議論に全力を尽くすとともに、労働組合のない職場も含めて、安心して働き続けることのできる職場づくりに向けて構成組織・地方連合会と一体となり、引き続き取り組んでいく。

まとめると、前半部分では、
法律は一部評価する。ただ、高プロは絶対認めない。
問題に切り込んだ野党よくやった。という内容です。
後半部分では、法律の実効性確保のためには、まだ様々な取り組みが必要だよ
といった内容でしょうか。

高プロ以外の内容は連合も一部評価しているんですね。評価しつつも、野党の取り組みについてしっかりと評価してあげている点をみると、連合の立ち位置が良く分かりますね。

全国労働組合総連合(全労連)のコメント

最後に、全労連です。

カテゴリー:「オピニオン」
題目:「【談話】「高度プロフェッショナル制度」を含む「働き方改革一括法案」の成立に抗議する
発言者:全国労働組合総連合 事務局長代行・橋口紀塩

「高度プロフェッショナル制度」がついに創設される事態となった。全労働団体、法曹関係者、全国過労死を考える家族の会、多数の市民の反対を無視し、労働基準法にドリルで穴をあける暴挙をおこなった政府、自民、公明、維新の各党、経団連、御用学者らに対し、全労連は満身の怒りをこめて抗議する。 (中略)
残業代ゼロで働かせ放題、過労死しても労災認定もされずに自己責任とされるおそれのある「高プロ」は、断じて容認できない。廃止をめざしてたたかいを継続する。 (中略)
有期・パート労働法、労働者派遣法の規定ぶりも、いわゆる「将来にわたっての人材活用の仕組みの違い」によって、正規・非正規の賃金格差を是認しており、実態は「同一労働・差別賃金容認法整備」であって、ただちに改正が必要である。 (中略)

悪法は制定されたが、たたかいはここで終わりとはならない。政省令・指針を検討する労働政策審議会に向けた取り組み、悪法から職場を守る取り組み、悪法を廃止し本物の働き方改革を実現する取り組みを、ただちに開始する。

今までのコメントとは比べ物にならないくらいの熱量を感じますね。
賛成コメントは一つもなく、高プロはもちろん、労働時間の上限時間、同一労働同一賃金に関するルールにしても全面反対です。
一部評価していた連合とは異なる姿勢ですね。

「廃止をめざしてたたかいを継続する。」
「たたかいはここで終わりとはならない。」

全労連の強い反対姿勢をこれでもかというほどに感じる熱のこもった談話ですね。

 


いかがでしたでしょうか。
それぞれのコメントを比較すると、今回の法律や政権に対する態度が知れて興味深いと思いませんでしょうか。
一筋縄ではいかない政治の奥深さをうかがい知れた気がします。