人事部の仕事で、単純だけど作業量の多い仕事の一つに「就労(勤務)証明書」の作成があります。
証明書作成を担当している私は、社員の方から年間を通してたくさんの勤務証明書の作成依頼を受けます。
保育園入園手続きのために必要なのですが、この勤務証明書、自治体ごとにフォーマットが違うんですよね。
働き方改革の一環として、全国で様式を統一しませんか?
強く希望します。
就労(勤務)証明書とは?
保育園の入園手続きの際に必要となる会社の就労証明書(or 勤務証明書)。
社員の勤務状況について会社が証明する必要があり、多くの会社で人事部が作成を担当しているはずです。
人事部員である私はその証明書の作成を社内で担当しており、年に50枚以上は作成しています。
1枚の作成に20分とすると、年間16時間40分を証明書作成に費やしていることになります。
保育園に入園できなかったら死活問題なので、依頼してくる社員の方からは書き方について細かい注文が入ったり、無理なお願いが入るケースもあり、なかなか大変な業務の一つです。(実態と異なる無理なお願いは全てお断りしています。。)
フォーマットが異なり毎回作成が大変
大変な業務の理由の一つとして、フォーマットが各自治体で異なるのです。
簡単な「労働条件」や「労働日数」を聞いてくるだけの自治体もあれば、
6カ月間の「残業時間数」や「残業日数」まで聞いてくる自治体もあり、毎回記入例を細かく読み込む必要があります。
実例をあげて比較してみましょう。
就労証明書の事例
① 大阪市 (標準的事例)
標準的なのが、大阪市の証明書です。(2018.11.1現在)
「雇用形態」、「休日」など基本的な条件に加え、「3か月の給与実績・就労日数」、「育児休業の実績」を求められます。
② 練馬区 (面倒くさい事例)
対して、東京都練馬区の証明書を見てみましょう。(2019.11.1現在)
今まで経験してきた中で「めんどくさい!」と思ったのが、この練馬区の証明書です。
前半部分は他と変わらないのですが、後半の「勤務実績」がとても細かいのです。。
【必要事項】
○3か月の勤務日数
○有給休暇取得日数・取得時間
○実働時間(休憩・有給休暇・残業時間除く)
○超過勤務日数・時間
勤務日数だけでなく、有給取得日数や残業した日数まで求められます。
超過勤務日数や、有給休暇と残業時間を除いた実働時間などは勤怠システムからは一発で出てこないんですよね。(当社の場合)
月次の勤務表を確認しながら目視でカウントする必要があります。
勤務時間を1分単位で記録している場合の残業日数ってどうカウントしたら良いんですかね?いつも迷います。。
練馬区住民の多い企業は証明書の発行作業が本当に大変だと思います。
保育園入園のための勤務証明書の様式は全国で統一化しませんか?
このように書式が自治体ごとによって異なる就労証明書。
企業への負担は決して軽いものではございません。
記入例を読み込み、分からないことがあれば自治体の担当者に問い合わせ。
ボールペンで証明書を記入。間違えれば再度印刷して記入し直しなどなど。
フォームが統一されていないことから、システム化が難しく、どうしても手作業になってしまうのです。
証明書の様式を簡素化・統一化がされれば、企業の負担は大きく減ると思うのです。
と、思っていたら既に政府内でも、議論が進んでいるようでした。
保育所入所のための就労証明書の様式統一化の動き
一般社団法人日本損害保険協会の提言
一般社団法人日本損害保険協会という業界団体が、働き方改革の一環として保育所入所のための証明書を統一化・電子化する提言を政府に何度か行っているようです。
2015年提言内容:「規制改革ホットライン」規制改革要望
2017年提言内容:保育所入所に係る各種証明書の統一化について
証明書様式統一に向けた政府の姿勢・対応
これらの提言に対して、政府はどのような対応を取ったのでしょうか?
一言で表すと、
「気持ちは分かるけど、現実問題なかなか難しい。ただ少しずつ対策を進めている」
といった状況のようです。
証明書の統一化に向けた議論がされたのは規制改革推進会議という会議です。
その会議の資料がこちらです。
『保育所入所に要する証明書の様式について』
資料を読むと、「オンライン化による申請を可能にし、統一化を図りたい。
その方向でこれから市区町村にアンケートを取り、調整を図る」という結論でした。
ただ、この実現にはなかなか難しいようです。
別の資料によると、統一をためらっている政府の姿勢が見受けられます。
「保育の必要性認定に当たっては、国が基準の一部をお示ししていますが、その運用においては、保育の実施主体である市町村が地域の実情にかんがみて、適切に実施いただいていると認識しています。そのため、証明書の項目等の統一については、慎重に検討する必要があると考えています。」 (保育所入所に要する証明書の様式に関するホットライン要望)
保育所入所のために国が基準を設けているけれど、実際の運用は市区町村で各自判断しているようです。
つまり、「市区町村で評価ポイントが異なるから、様式統一するのは難しい。」というのが政府が統一をためらう理由のようです。
2017年8月、内閣府が標準となる証明書を公表!
以上の流れを受けて、政府は標準的な就労証明書を2017年8月に公表しました。
『保育の必要性の認定の際に用いる就労証明書の標準的様式について』
大阪市の就労証明書とほぼ同じ内容ですね。
ただ、これを使用するのかは各市区町村任せ。
2018年1月時点では、このフォーマットを採用している市区町村は24%。今後活用する予定の市区町村は13%にとどまります。(参考)
ぜひとも各自治体はフォーマット統一に向けて、今回内閣府が提案した標準の証明書を採用していただきたいです。
マイナポータルに「就労証明書作成コーナー」が開設!
2018年10月1日より、マイナンバーに関するサービスを掲載している「マイナポータル」に「就労証明書作成コーナー」が開設されました。
こちらのページでは、各市区町村の就労証明書を画面入力で作成することができます。
詳しくは下記の記事にまとめましたので、作成手順を知りたい方はこちらの記事をどうぞ。↓
マイナポータルに「就労証明書作成コーナー」がオープン! 【証明書作成担当者の感想】
確かに、このサイトができたことで、証明書の作成を「手書き」から「手入力」に移行することができます。(元々エクセル版をアップしている自治体もあり、今までもほとんど手入力でしたが)
しかし、
「そういうことじゃないんだよなぁー」、
というのが私の正直な感想です。
なぜなら、依然としてフォーマットは各市区町村でバラバラのままだからです。
証明書作成担当者が望むのは、あくまでフォーマットが統一されることなのです。
フォーマットが全国で統一されれば、
社員番号を入力⇒社員の就労証明書が自動で作成!⇒あとは印鑑押すだけ。
みたいなことができるはずなのです。
証明書の自動作成が可能になれば、人事部の証明書発行業務は大幅に削減できます。
誤記入や記入漏れもなくなり、自治体の負担も減るはずです。
こういった無駄をなくすことこそ働き方改革の本丸だと思っています。
ぜひとも、勤務証明書様式の統一化を強く望みます。
【おすすめ記事】