AI をテーマにした近未来SF映画が、昨今多く上映されています。
近い将来はこんな世界になっているんじゃないか? と、想像力を刺激され、観ていてワクワクする映画ばかりです。
そんなAI 映画を今後観たときに、ぜひ注目してもらいたいのが、
AI が普及した社会において、人間はどんな仕事に従事しているのか?
という点です。
この視点で映画を観てみると、将来人間に残された仕事が具体的にイメージできて、とてもいい勉強になります。
「AI が仕事を奪う!」と最近騒がれていますが、自分のサラリーマン人生に不安がある方は、ぜひAI を描いた映画を観てみることをオススメします。
今回は、そんな数あるSF映画の中でも 『her 世界でひとつの彼女』 という映画に絞って近未来の人間の仕事について考えてみたいと思います。
この作品に描かれている人間の職業が、非常に示唆に富んでいて大変興味深いのです。
『her 世界でひとつの彼女』 とは?
2014年に公開された、AI と人間との恋愛を描いた近未来SF 恋愛映画です。
AI と人間の恋愛という奇想天外のテーマでありながら、
10年後の未来はこんな社会になっているんじゃないか?
と、現実的に思えるようなリアリティあふれる映画になっていて、本当に興味深い映画でした。
しかも、面白いだけでなく、感動します。
この作品の中では、一人ひとつAI を保有しているのが当たり前の時代。
(イメージは Siri がもっとパーソナライズされ、きめ細やかな生活のサポートを音声で行ってくれるAI )
街中では、みんな自分専用のAI と会話をしています。
エレベーターの中でAI とブツブツ会話していても誰も気にとめません。
主人公のセオドアはそんなAI に恋をしてしまいます。
確かに、作中のAI はいつもそばにいてくれて、きめ細やかに支えてくれて、時には冗談も言って和ませてくれる存在。
恋をしてしまうのも当然かな? と誰もが思ってしまうような魅力的な存在です。
しかも、AI も人間の感情を学ぶことでセオドアに恋心を抱くようになるのです。
果たして、AI と人間の恋愛は成立するのか?
というのが、この映画のあらすじです。
作中で描かれている人々の職業
この作中では、AI が日常生活に浸透し、自動化が進んだ社会が舞台です。
パソコンにキーボードは無く(全て音声認識)、
ビデオゲームは空間に映し出されたARの世界で旅をしています。
そんな世界で人々はどんな仕事をしているのか?
あまり多くは出てきませんが、4人の職業が作中には描かれています。
手紙代筆ライター
主人公のセオドアは、ハートフルレター社という会社に勤務しています。
この会社は手紙を依頼者に代わって作成する手紙代筆会社です。
彼は依頼者から、「こんな手紙を書いて欲しい」という依頼を受けて、手紙を作成します。
依頼者と手紙の相手の関係性を知り、手紙の受け手が感動するような文章を独特な表現を用いて作成しています。
のちに彼は、執筆した手紙の素晴らしさが認められ、書籍化の話を受けることになります。
ゲームソフト制作
主人公の良き相談役となるエイミーはゲームソフト制作の仕事に従事していました。
AI の協力を得ながら、人々が楽しめるストーリー性のあるゲームを悩みながら作り出しています。
彼女は悩んだ挙句、主婦が家庭の中で自慰行為をするというよく分からないゲームソフトを作中の最後に制作していました。(笑)
道端でパントマイム
中盤のシーンに一瞬ですが、描かれています。
道端でパントマイムをするスーツ姿の男性。
誰にも注目されることなく、街中に取り残されているような描かれ方でした。
AI代理性交ワーカー
この作品で最もメインである中盤のシーンに出てくるイザベルという女性。(以下、ネタバレあります)
彼女はAI に代わってその持ち主と性行為を行う「AIのための代理性交サービス」に従事しています。
AI は声だけの存在。
そんなAI も人間の感情を知ることで、恋愛感情を覚え始めます。
主人公のセオドアをサポートするAI サマンサもその一人。
お互い愛し合っているのに、肉体的恋愛にはどうしても発展できない。
そんな絶対的な壁を乗り越えるために作られたのが、この「AIのための代理性交サービス」。
人間がイヤホン越しでAIの指示を受けながら、AI の主人と性行為を行うのです。
これで恋愛関係にあるAI と人間は肉体的にも結ばれる。というのがこのサービスの趣旨です。
衝撃的なサービスですよね。(笑)
賛否を呼ぶであろうこのサービスを描いたシーンは非常に奥深いと思うことがあり、別の記事にまとめています。
映画『her/世界でひとつの彼女』で最も印象に残ったシーンを考察【心身二元論】
共通するのは、人間の感情に関すること
ご紹介した職業は、全て人間の感情にかかわることなのかなと思います。
人が感動するような手紙の執筆、
熱中するゲームの製作、
人だからこそ驚きを与えられるパントマイム、
そして、人間にしかできな人間通しの性行為。
どれも、人間の感情を動かすサービスであり、AI に覚えさせるのは難しそうな作業です。
特に、主人公のセオドアが「ハートフルレター」という会社で手紙の代筆を仕事にしていた、というのは示唆に富んでいるのではないでしょうか?
依頼者と手紙の相手との関係性を想像し、手紙の受け手が感動するオンリーワンの文章を生み出す。
「こんな人間の心を温める仕事は、人間にしかできないんだ!」、この映画の作り手のそんな想いが聞こえてきそうです。
人間にしかできない仕事は、人間を感動させることなのかもしれません。
AI の異常な進歩速度に恐怖を感じる場面も
作中に出てくるAI は異常な速度で進歩していきます。
抽象的な想像力も身に付け、しまいには作曲までしてしまうのです。
「私の今の想いを曲にしたわ♪」と。
人間に残された仕事という視点でこのシーンを観ると、恐ろしさを感じる場面でした。
このように、AI映画を「人間に残された仕事」という視点で見てみると、非常に興味深いことが分かります。
ぜひ、みなさんも今後AI を描いたSF 映画を観る際は、チェックしてみて下さい。
また、今回紹介した映画『her/世界でひとつの彼女』。
とっても面白いのでまだご覧になってない方は、ぜひ観てみて下さい。
詳しい感想はこちらの記事にまとめています。