小説『オペレーションZ』感想 ~日本の財政問題を考えるきっかけに~

2018年5月10日、財務省は国債や借入金などの債務残高(=国の借金)が過去最高の1,087兆円になったと発表しました。(参考

日本はこの1,000兆円をいつかは返済しないといけません。
「この先日本の財政は大丈夫なんだろうか?」
「自分が定年を迎えた際、公的年金はちゃんと支給されるのだろうか?」

「どっかで誰かがいつか大きな改革をしないと、日本は破綻しちゃうんじゃない?」

そんな「いつか」を描いたのが、小説『オペレーションZ』。
ある首相が、デフォルトの危機を回避するため、大胆な歳出削減策に打って出ます。そんな改革に世論はついてくるのか?官僚はどう応えるのか?

ちなみに、日本政府が最もお金を使っているのが、社会保障費です。(3割強)
つまり、日本の歳出削減を実行した場合、社会保障制度を大きく変えることになるのです。借金返済のために、日本の歳出を削減した場合、日本の社会保障制度はどう変わっていくのか。そんなifがこの小説には詳しく描かれています。

今後の日本の社会保障を考えるきっかけとして、企業で社会保険や給与を担当している方々に本当におススメの小説です。勉強になるし、何より面白い。
今回はそんな小説『オペレーションZ』を紹介します。

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『オペレーションZ』の作者

作者:真山仁
発行年月日:2017年10月20日
発行所:新潮社

作者は、あの「ハゲタカ」シリーズで有名な真山仁です。
元・読売新聞記者ということもあり、難しいテーマを素人でも分かりやすく説明しながらストーリーを展開してくれます。また、政府とマスコミの関係性が詳しく描かれており、その点も興味深いです。

今回は、『オペレーションZ』を書くに当たって、財務省の若手職員と勉強会を開き、彼らの意見を取り入れながら制作したそうです。

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『オペレーションZ』のあらすじ

日本の国家予算を半減する!
新たに総理に着任した、江島はそう決断した。
これ以上借金を積み上げ、財政問題を先送りしていたら、必ず日本は破綻(デフォルト)してしまう。デフォルトを避けるためには、歳出を半分にしなければならない。

総理の決意を遂行するため、若手財務省職員が秘密裡に集められた。プロジェクトチーム名は「チームOZ」。プロジェクトの名前は「オペレーションZ」。

国家予算を半減すると言っても、歳出の内、約25%は借金の利息返済と償還費用。これは減らすことができない。
つまり、国家予算を半減するためには、残り75%の歳出を25%まで削減する必要がある
そんな前例のないプランを実現するためには、歳出の大半を占める「社会保障費」と「地方交付税交付金」を0にしないとでも到底不可能。


参考:平成30年度一般会計構成比割合

プロジェクトメンバーがいくら反対しても、江島総理の決意は変わらない。
チームOZは総理の決意を実行するために、動き始める。
しかし、案の定多くの官僚は大反対。
プロジェクトの内容がマスコミに漏れると、マスコミは一斉にネガティブキャンペーンの大合唱。
情報を知り、反対のデモを起こす国民。
更には、不穏な動きを見せるロシア。

孤立無援の江島総理とチームOZのメンバー。
彼らは歳出半減を実現することはできるのか?
そして、日本はデフォルトを回避できるのか?

『オペレーションZ』の感想~詳しくない人にも読める~

まず、とても面白かったです。
キャラクターがそれぞれちゃんと確立されており、登場人物が多くてもしっかりとついていくことができました。
また、国の財政問題という難しい問題を取り扱っていますが、要所要所でかみ砕いて読者に説明をしてくれるので、最後まで理解しながら読み進めることができました。

財政について詳しくない方にもお勧めできる小説でした。
むしろ、日本財政の問題についてあまり知らない方々にぜひ読んでいただきたい小説に思います。

『オペレーションZ』の感想~いつか必ずくるその日~

「日本の借金やばいらしいじゃん? けど、今はまだ大丈夫なんでしょ?」
「自分の生活がいっぱいいっぱいでそんなの知ったこっちゃないし。」

多くの日本人がそう感じてると思います。
自分のその内の一人でした。

そんな日本人に警鐘を鳴らすために制作されたのが、真山仁の小説『オペレーションZ』です。

いつかは1,000兆円の借金を返済しないといけない。
その返済を現代で実現しようとした場合、何が起こるのか? どんな反応があるのか?

まるで現実社会で起こったかのように、リアルに詳細に描かれているように感じました。
そして、日本政府の腰の重さと日本人の悪魔的な楽観主義に恐怖を覚えました。

小説に書かれている内容が、いつか確実に起こるのかと思うと、ゾッとします。

『オペレーションZ』の感想~給与・社保担当者に本当におススメ~

企業で給与や社会保険を担当していると、従業員がいかに税金や社会保障について知らないかを強く実感します。

会社は学校ではありませんが、従業員の窓口になる存在として、現在の社会保障制度の内容とその問題点を理解しておく義務があると思っています。
日本がこのまま借金を見て見ぬふりをしながら進んでいったら、社会保障制度はどうなるのか?
企業の社会保険の担当者としてぜひ知っておくべき内容なのではないでしょうか。

単純にストーリーとして面白いので、通勤途中にでもぜひ読んでみて下さい。


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