先日、厚生労働省が主催する『平成29年度 過重労働解消のためのセミナー』に参加しました。(参考)
国主催のセミナーのため、教科書的な一般論しか紹介されないのかなと、あまり期待していませんでした。
が、当日参加してみると大変勉強になるセミナーでした。
特に興味深かったのは、働き方改革に成功した企業11社を成功事例としてじっくりと紹介してくれた点です。
多くの他社事例を一度に聞ける機会は今までなかったため、貴重な経験となりました。
そんな働き方改革に成功した11社の話を聞いていると、働き方改革を成功させるには3つの改革が必要なのではないかと感じました。
その3つとは、「風土改革」・「制度改革」・「業務改革」の3つです。
今回はそんな、「働き方改革に成功した企業に共通する3つのポイント」についてまとめました。
企業事例一覧
今回厚労省のセミナーで企業の成功事例として紹介された会社は、以下の11社でした。
- サンケイ化学株式会社(鹿児島県・農薬業)
- 株式会社関通(大阪府・物流業)
- 三承工業株式会社(岐阜県・建築業)
- 名古屋眼鏡株式会社(愛知県・眼鏡業)
- オザキエンタープライズ株式会社(東京都・パチスロ業)
- 株式会社小田島組(岩手県・建設業)
- ランドマーク税理士法人(東京都・税理士法人)
- 株式会社ISO総合研究所(大阪府・ISO運用代行)
- 株式会社リカースペース太陽(山口県・小売業)
- 宮園自動車株式会社(東京都・タクシー業)
- リコージャパン株式会社(東京都・メーカー)
(配布されたパンフレットに記載、又は当日紹介された会社)
大企業から中小企業まで多岐に渡った紹介がなされました。
では、これらの会社は実際にどのような効果を得られたのか。
今回のセミナーで紹介されていた効果は以下の通りです。
- 残業時間: H27.4=10.5h⇒ H29.4=4.3h(小田島組)
- 残業時間:月70時間前後⇒月20時間未満に(オザキエンタープライズ)
- 減員したが売上前年比106% 粗利益前年比102%(名古屋眼鏡)
- 業務効率化と労働時間の削減により取り組み開始して6年前の取り組み開始時と比較して売上200%(三承工業)
- NHKから取り組みについて取材を受ける。そのことも効し、毎年50名ずつ採用を増やすことができた(開通)
- 業務効率化により生産性の向上。訪問件数110%UP、新規訪問130%UP(リコー)
共通する3つのポイント
上記の11社は全て、大きく3つの改革を通して働き方改革を実現させていました。
① 風土改革
1つ目は風土改革です。
「デキる社員は残業する」という風土から「残業を悪」という風土に少しずつ改革をしていきました。
その実現には、何よりもトップが本気度を示すことが重要のようです。
社長自ら定時後に見回りをしたり、残業ランキングを掲示したりするなど、上から「早く帰れ」プレッシャーをかけることで、「残業は悪」という風土を作り出していました。
- 残業ランキングの掲示(ランドマーク、開通)
- 幹部への休暇未消化への罰則規定設定(リカースペース太陽)
- 社長主管の説明会で会社の方針を繰り返し説明(小田島組)
- 残業目標時間を超過した部署の管理職は改善報告(サンケイ化学)
- 有給休暇消化率100%の義務付け(ISO総研)
- 労働時間改善について取り組む「ワークライフハーモニーチーム」を組織(名古屋眼鏡)
② 制度改革
2つ目は制度改革です。
フレックスタイム制の導入など、勤務時間を柔軟に社員自身で設定できるような制度を導入したり、残業の少ない社員が高く評価されるような評価制度を導入するなどし、制度面の改革を実行していました。
- 時間単位年休やシフト勤務などフレキシブルな勤務体系の導入(リコー)
- 残業削減を推進するインセンティブ賞与制度導入(開通)
- 残業しない社員は高く評価され、ボーナスに反映(小田島組)
- ノー残業デーを月7日に増やす(三承工業)
- 早番・遅番のシフト勤務に中番を導入(オザキエンタープライズ)
③ 業務改革
3つ目は業務改革です。
風土や制度が変わっても、目の前の業務量が変わらなければ労働時間は減りません。ITの活用や業務再割り振りを通して、業務量を減らしていきました。
- 事務作業専用の部署を新設(ISO総研)
- 日報自動作成システム導入(宮園自動車)
- 1会議15分・資料1枚などの会議変革(リコー)
- 従来は2人必要だったが1人でもできる測量機械の導入(小田島組)
- 電話注文からネット注文へ(名古屋眼鏡)
- チラシ印刷などの単純作業の外注化(名古屋眼鏡)
- 人に仕事をつけるのではなく、仕事に人をつける(ISO総研)
以上が3つのポイントです。
「風土改革」・「制度改革」・「業務改革」これら3つを実現することで、働き方改革は実現できるのだと、今回のセミナーを通して思いました。
実現には数年単位
どの企業も改革に取り組んでから成果が目に見えるまで数年単位の時間が必要だったようです。
- 残業時間削減の効果が見え始めるまで3年。(サンケイ化学)
- 様々な取組が複合的に効果を出し、実感するまでに3年が経過している。(小田島組)
- ルールの整備に3カ月。周知に2カ月程かかった。(開通)
ほとんどの会社が、
ルールの設定・周知に1年
制度開始から効果の実感まで3年
は、かかっているようです。
一朝一夕にはいかない働き方改革。
3~4年スパンで取り組む必要があるようです。
自分の会社の実行具合を3つの点から確認してみよう!
今まで見てきた3つの改革、「風土改革」・「制度改革」・「業務改革」。
自分が働く会社は、どの改革が出来ていて、どの改革が出来ていないのか。働き方改革を考える際に3つのポイントから診断をしてみてはいかがでしょうか。