年末調整の結果をお送りすると、様々な反応が返ってきます。
主だった反応は2つ。
還付が多くて喜んでいる人。徴収になって憤っている人。
特に、徴収になった方は「何で自分は徴収なんだ!」と損をしたかのように訴えてくる方がいます。
この反応は、本当に正しいのでしょうか?
時間的価値を考えると、年末調整の結果が徴収になった方がお得だと、私は思うのです。
年末調整により還付された場合
まずは、年末調整の結果、所得税が還付された場合を考えます。
年末調整により税金が還付されたということは、
今年一年間の月次給与の所得税が本来より多く控除されていたことを意味します。
つまり、年末調整時点まで、本来より多くの所得税を国に納めていたことになります。(しかも無利息で)
言い換えれば、国に無利息でお金を貸していたと考えることができます。
年末調整により徴収された場合
反対に、年末調整により税金が徴収された場合はどうでしょうか。
年末調整により税金が徴収されたということは、
今年一年間の月次給与の所得税が本来より低い金額で控除されていたことを意味します。
つまり、年末調整時点まで、本来より少ない所得税を納めていたことになります。
言い換えれば、国からお金を無利息で借りていたと考えることができます。
年末調整の結果 ⇒ | 還付 | 徴収 |
月次給与の所得税 ⇒ | 本来より多く納付していた | 本来より少なく納税していた |
言い換えれば ⇒ | 無利息でお金を貸していた | 無利息でお金を借りていた |
還付でも徴収でも、年間の所得税額は変わらない
月次給与や賞与から引かれる所得税は、仮の税額に過ぎません。
年末調整においてその年の年税額が確定し、差額分が調整されます。
つまり、年末調整で還付になろうが、徴収になろうが、年間のトータルでみた場合の納税額は一緒です。
しかも、年末調整の時点まで所得税を多く納めすぎていたとしても、
「今まで多く納めてくれていたので、その分の利子を付けて返しますね。」と、国が利子をつけてくれる訳でもありません。
以上のことを考えると、時間的価値が発生している徴収の方がお得じゃないでしょうか。
時間的価値を考える
年末調整で徴収になったということは、1月から11月までの給与の所得税額が本来より少なかったため、手取り額が多かったことになります。(その分12月に追加で納める。)
本来より多かった手取り額を運用に回すことができれば、その分の利息が発生します。(時間的価値)
低金利の時代とはいえ、普通預金に預けていればその分の利子がつくことになります。
もしくは、ローンの返済や投資に回すこともできます。
最終的に、納めていなかった所得税を年末調整で納めることになるのですが、それまでの期間、利息などの時間的価値が発生しています。
還付の場合はこうはいきません。
所得税を年末調整まで国に本来より多く納めていたとしても、利息はつきません。
しかも、毎月の手取り額はその分少なかったことになります。
以上のことから、年末調整は徴収になった方がお得だと、私は思うのです。
悪用は厳禁
ただ、これはあくまで結果の話です。
この制度を悪用して、月次給与の所得税を不当に低くするのはNGですので、ご注意を。
よくあるのは、配偶者控除の不当申請です。
配偶者が正社員で働いているにもかかわらず、年初に配偶者控除を申請。
1月から11月給与まで不当に月次給与の所得税を低く抑える。
年末調整の際に、配偶者控除無しで再度申請をし直す。
年末調整の結果、徴収となり、多額の所得税を納める。
こうすれば、年末調整までは所得税をかなり低く抑えることができます。
更には、税務署からの調査(扶養是正調査)が入るまで黙っていようと思う方もいるかもしれません。確かにそうすれば2~3年の時間的価値が生まれます。
しかし、調査対象になるということは税務署に目を付けられることを意味します。
しかも、調査の対応には複数の書類を準備するなど、とても面倒な作業が発生します。
扶養控除は正しく申請をしましょう。
税務署からの扶養是正調査の対応に関しては、こちらの記事をどうぞ。
関連記事;税務署からの扶養是正調査『扶養控除等の見直し』の給与担当者の対応方法について
大事なのは、時間的価値
以上見てきたように、時間的価値を考慮した場合、年末調整は徴収になった方がお得だと考えます。
大事なのは時間的価値です。
年末調整で徴収となり、納得のいっていない社員の方には、この時間的価値の考えを教えてあげると良いかもしれません。