病気休暇を社員が取得する際は、診断書を勤務先に提出させることがほとんどです。
そのため、人事部員は当たり前のように社員の病名を知ります。
もちろん、病名は社員のプライバシーに該当しますので、取り扱いには充分注意しないといけません。
では、病気休暇を取得した事実を公表することはプライバシーの侵害にあたるのでしょうか?
病気休暇を取得していることを勤務先に公表された従業員が裁判を起こしました。
果たして「病気休暇の公表」はプライバシーの侵害なのか?
事例
佐賀県で高校教員をしているAさんは、うつ病を患い、病気休暇を取得することに。
学校は、Aさんが病気休暇を取得したことを「学校だより」の転出者欄に記載して生徒に配布しました。
さらに、その「学校だより」をウェブサイトに公表しました。
(公表したのは「病気休暇」を取得した事実のみで、病名は非公表)
自分が病気休暇を取得した事実をウェブサイトに公表されていることを知ったAさんは、プライバシーの侵害を主張します。
慰謝料100万円の支払いを求め、佐賀県を訴えました。
(その他、うつ病になった原因を職務によるものとして、安全配慮義務違反を同時に主張)
果たして裁判所の判断は?
判決
⇒ 慰謝料10万円の支払い(請求額は100万円)
今回の事例では、「本人の同意なく、みだりに公表することは許されず、違法」として、病気休暇取得を公表すること自体もプライバシーの侵害と認めたのです。
判決理由では、「個人の健康状態、心身の状況、病歴などは通常他人に知られたくない情報で、不利益を生じさせうる」と判断し、「公表によって精神的苦痛を受けたと認められる」として、原告の主張を受け入れました。
この判例は全てのケースには当てはまらないはず
今回のケースは、少し特殊な案件であることも理解しておく必要があります。
⇐退職してないじゃん!
・名前が掲載された「学校だより」をサイトに公表したのが、発行から1年経った後
⇐なんで今更!
という条件が重なったことから、裁判所も「そりゃひどいんじゃない?」と判断し、精神的苦痛を認めた形です。
もし、「学校だより」にもともと「休職者」欄があってそこに名前が掲載されていた場合や、
発行後すぐにサイトに公表されていた場合は、判決が変わっていたかもしれません。
とはいえ、「病気休暇の取得した事実を公表することは、精神的苦痛を与える。」と、裁判所は認めました。
人事部員は、病名だけでなく病気休暇を取得した事実の取り扱いについても充分注意する必要があります。
- 労働経済判例速報2383号
- 佐賀新聞Live