この記事では、税務署からの扶養是正調査『扶養控除の見直し』についての対応方法をまとめています。
この調査は会社宛てに送付され、企業が社員の過去の扶養状況について調査をしなければいけません。
そのため、この記事は企業の担当者目線で対応方法を書いております。
一方で、調査の対象になった社員の方も、この記事を読めば企業の対応方法を知ることができますので、より対応がしやすくなる内容となっております。
誤りがあった場合は、不足している所得税を徴収することになります。
収入が高い方は10万円ぐらいの徴収になることも。。
社員の方からは「なんで今更? 」と納得がいかない方も多いこの調査。
今回はそんな扶養控除の見直しの対応方法についてまとめてみました。
税務署から送られてくる『扶養控除等の見直し』とは
『扶養控除等の見直し』とは、税務署が行う所得税に関する指導の一つです。
「この社員さん、奥さんを扶養に入れてこの年は年末調整しているけど、実は収入上限超えてませんか? 企業の方で調べてください。」 by 税務署
といった内容で企業の給与担当者あてに送付をしてきます。
税務署は「誤りなのでは?」というスタンスです。
実際に確認するのは企業なので、企業の担当者が調査し、誤りがあれば企業で税金を再計算しなければなりません。
その結果を税務署に報告します。
さらに、税務署の指摘通り過去の扶養申告が誤っていた場合、
その年度だけでなく過去3年間に亘ってその社員の扶養申告に誤りがなかったかを企業は確認しなければなりません。
(税務署からの指摘はほぼ100%裏があるため、必ずといっていいほど3年間分の所得を確認することになります。)
企業担当者の対応方法
今回、給与担当者である私が実際にこの調査を対応をした流れをまとめていきます。
① 当時の扶養控除申告書を見て、当時の計算に誤りがなかったか確認
対象者の当時の扶養控除等申告書を探し出し、本人の申告と会社の年末調整の計算が一致していたかを念のため確認します。
② 対象者へ説明
①(年末調整の計算)に誤りがなかった場合、本人の申告が誤っていたことがほぼ確定します。
対象となった社員の方に対して、今回の是正調査の対象となった旨と、今後の対応方法についてご説明をします。
通知が来てから3週間後ぐらいまでに税務署に回答しなければならないため、早めに行動する必要があります。
③ 対象者に課税証明書を取得してもらう
対象となった社員から、指摘を受けた扶養親族の所得を証明する書類を提出してもらいます。
一番正確な確認方法は「課税(所得)証明書」での確認です。
取得される際は、「年分」と「年度」に要注意です。
平成27年分の所得を確認する場合は、「平成28年度の所得証明書」で確認をすることになります。
書類の題名と内容に1年ズレがありますので、対象年度にご注意ください。
④ 所得の確認
社員の方より提出して頂いた課税証明書より、見直し確認対象者の当時の所得が38万円を超えていないかを確認します。
損失の繰越控除の適用前の所得金額で判断をします。
「繰越控除を適用すると所得がマイナスになっているから、扶養に入れるはずだ」と考える方が多いので、不動産所得がある方の指摘が多いです。
⑤ 申告誤りが判明したら、3年間分を調査
④にて所得が38万円を超えていたら、扶養控除申告が誤っていたことになります。
過去3年間分の所得の確認が必要になります。
3年間分の課税証明書のご提出を依頼します。
扶養是正調査の対象になった段階で、ほぼ100%申告が誤っていたあることが確実です。
初めから③の段階で3年間分の課税証明書の提出をお願いすることをお勧めします。
⑥ 申告誤りがあった年を再年末調整
申告が誤っていた年の年末調整を再計算します。
- 申告に誤りがあった年の扶養控除等申告書を再記入してもらう。(誤りがあった親族を除いて再度記入してもらう。)
- 再記入してもらった扶養控除等申告書をもとに再年末調整を行う。
計算の前に訂正前の源泉徴収票も保存しておきましょう。
もし手計算する場合は、こちらのサイトで確認するのがお勧めです。
「源泉徴収票(給与所得) - 高精度計算サイト」
配偶者の所得オーバーの場合、配偶者控除の対象外になったとしても、配偶者特別控除(配特)の対象になる場合があります。
配特で計算すれば徴収額が少なくなりますので、必ず確認をしましょう!
⑦ 再年調による差額分を本人より徴収
再年調の結果をお知らせし、本人に徴収となる税額をお伝えします。
収入が1000万円ぐらいの方は10万円ぐらいの徴収になることもあります。「そんなに引かれるの! 」と驚かれることが多いので丁寧な説明を。
更に、扶養親族がいる社員に家族手当を支給している場合は、家族手当も返金してもらう必要があるはずです。
一括徴収なのか分割しての徴収なのかを社員の方と相談して決めましょう。
⑧ 見直し結果回答書を税務署に送付
今回の調査結果を、同封されていた「結果回答書」に記載し税務署に送付します。
回答書の下部に納付予定日を記入する欄がありますので、記入を忘れずに。
⑨ 所得税の納付
本人より徴収した所得税を税務署に納付します。
通知書に同封されていた納付書を必ず使用する必要があります。
通常の所得税納付書とは別にして納付しなければなりません。
分割して本人より徴収する場合は、会社が先に立て替え払いすることになります。
⑩ 正しい内容の法定調書を作成し、税務署へ提出
法定調書合計表の訂正分を作成し、税務署へ提出します。
対象者の支払金額が500万円以上だった場合は、源泉徴収票も再提出する必要があります。
訂正の方法についてはこちらのページをご確認ください。
⑪ 支払報告書を市区町村へ提出
訂正後の支払報告書を作成し、市区町村へ提出します。
こちらは金額の制限がありませんので、必ず届け出をします。
総括表と支払報告書それぞれの右上に「訂正」と書いて一緒に送付します。
以上で扶養是正の処理方法は終わりです。
お疲れさまでした。
通知が届いてから3週間程で税務署に回答をしなければなりません。
企業の担当者は迅速な対応が求められます。
次に、扶養是正に伴うよくある疑問点についてご紹介します。
延滞金や加算税はかかるの?
回答:かかりません。
今回の指摘で正しく是正を行えば、延滞金や加算税はかかりません。
正しく是正しましょう。
住民税はどうやって是正するの?
回答:多くの場合、すでに住民税は是正されています。
所得税は再年末調整で是正します。
では、住民税はどのように是正するのでしょうか?
自治体の担当者に確認したところ対応は以下の通りだそうです。
・自治体が既に把握していた ➡ 過去に住民税額が調整されているはず
・把握していなかった場合 ➡ 是正分の納付書が自宅に郵送される
(町田市役所の住民税担当者に確認。H29.4.5)
全住民の所得を把握している自治体は、住民税の計算の際に扶養控除申告が正しいかのチェックをしています。
誤りを見つけた段階で、住民税は再計算されます。
噂によると、その扶養の誤りを税務署にも報告しているそうです。
報告を受けた税務署が今回の是正指摘を行うという流れのようです。
なので、税務署から指摘を受けた時点ですでに、住民税は扶養是正後の金額で計算されていることがほとんど。
どこかのタイミングで対象社員の住民税額が増額されているはずですので、自治体からの住民税通知書を確認してみて下さい。
市区町村はすでに把握していることがほとんどですが、訂正があった場合は給与支払報告書の訂正版を報告する義務が企業にはあります。
訂正を必ず送付しましょう。
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